サイドFireとかいうフレーズが2020年はやたらと聞かれました。
息をするようにFire、Fire、Fire・・・ネスかお前は。
その流行りのFire・・特にサイドFireに、ちょっと違和感を感じています。
もくじ
Fireとは?
FIREとはFinancial Independence, Retire Earlyの略で、要は早期退職をかっこつけてるだけなのですが、私は「You're fired」とうまく掛けてるものだと思っていました。
経済的独立を早くに達成し、早期に退職して、老後は貯めたお金を運用しながら過ごそう、というもの。2011年頃からアメリカでそのブームが起こり、2018年で再び注目され、日本では昨年2020年にYou Tuberが書籍を紹介する等して多くの方が認知されたようです。
そして掲題のサイドFireとは、半分貯めて(運用して)、半分働くというライフスタイルを目指そうというもので、一生分のお金を貯めることは出来ないが、仕事量を半分に減らして、残りは不労所得で賄おうとする選択のことを指します。


実現性は?
そもそものFIREの実現性というのは4%ルールというものに則っているようです。
これは1998年にテキサスのトリニティ大学の教授Philip L. Cooley氏らの研究で、運用資産を4%ずつ取り崩し続けるというもの。
ここでのポイントは運用利回りを4%以上にして取り崩しても資産は減らないというもので、下記の表の左上の通り、100% Stocks(株式100%で保有)で、4%取り崩し(Withdrawal Rate)ても、15年は資産100%を維持できるということになります。
この時の株式というのはS&P500を指し、それらについては以下の記事をご参照ください。
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参考S&P500は本当に優秀なのか?他のETFと比較
こんにちは、茶碗です。 相変わらずS&P500に乗っかる話で申し訳ないのですが、本当にS&P500優秀な指数なのか見てみたいと思います。 この記事はこんな方におすすめ S&P5 ...
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またこれらの研究は表の通り1926年から1995年の間での計算となりますが、その後2009年までの調査に拡大しても、結論としては大きく変わりませんでした。
参考リンク:https://desjansaar.com/wp-content/uploads/2020/08/trinity_study.pdf
つまりこの研究に則ると、生活に必要な資金を4%以内で捻出できる分の株式を用意すれば、その時点で一生働かなくても生きていけるということになります。具体的に言うと、例えば一年に400万以内で暮らすことが出来るのであれば、1億円を運用すると4%(=400万)取り崩し続けても生きていける、ということです。


サイドFIREに当てはめると?
必要生活費400万とすると、『1億円貯めるのは無理、なので半分の5,000万円運用して運用益4%=200万を得て、残り200万は労働によって得よう』というのがサイドFireの考え方になります。
この物理的な実現性を追ってみたいと思います。ここで検証すべき数字は4つあります。
- 生活費400万の妥当性
- 5,000万円の運用
- 運用利回り4%以上
- 残り200万の労働
順番に見ていきたいと思います。
生活費400万で暮らせるか
リタイアした後どういう生活を送りたいかということですが、まずはざっくり平均を示したいと思います。
参照元は総務省HPです。
*横にスライド可能
一人暮らし | 13万円/月 | 156万円/年 |
二人暮らし | 22万円/月 | 264万円/年 |
三人暮らし(子供1) | 26万円/月 | 312万円/年 |
四人暮らし(子供2) | 34万円/月 | 408万円/年 |
4人家族だと家賃を入れた生活費で平均400万必要・・ということになります。子供のいない二人暮らし家庭だと400万に余裕はありそうですし、旅行も行けそうなレベルです。
では計算しやすいように、必要な生活費を以下の前提で進めたいと思います。
- 一人で生きていく⇒160万/年
- 二人で生きていく⇒270万/年
- 三人で生きていく⇒310万/年
- 四人で生きていく⇒410万/年
そうしますと先程の4%ルールでは、上記の生活費を捻出するために以下の金額(運用)が必要となります。
*横にスライド可能
ライフスタイル | 生活費前提 | 運用で賄うお金 | 4%ルールを達成するために必要なお金 |
一人暮らし | 160万円/年 | 80万円/年 | 2,000万円/年 |
二人暮らし | 270万円/年 | 135万円/年 | 3,375万円/年 |
三人暮らし(子供1) | 310万円/年 | 155万円/年 | 3,875万円/年 |
四人暮らし(子供2) | 410万円/年 | 205万円/年 | 5,125万円/年 |
と、いうことで、4人暮らし=生活費400万は平均と考えることにします。
5,000万をためる
結構な大金ですよ。
毎年500万貯めて10年かかります。サイドFire狙う人が500万貯めるのは相当難しいので、半分の250万で20年・・250万/年貯めるには、月21万・・・。多いな。もうちょっと減らして、月10万貯めるところから考えると、年120万・・・5,000万まで41年・・。いや、普通の定年退職やないかい。
無理じゃん!
ということでここでは複利パワーを使うのでしょうけれど、同じように4%で再投資していくと、先ほどの金額を貯めるまでにはどれぐらいかかるのでしょうか。
ここでは仮に20年で貯めようと考えてみます。
*横にスライド可能
ライフスタイル | 4%ルールを達成するために必要なお金 | 4%運用かつ20年で貯める場合 |
一人暮らし | 2,000万円/年 | 5.5万円/月 |
二人暮らし | 3,375万円/年 | 9.2万円/月 |
三人暮らし(子供1) | 3,875万円/年 | 10.5万円/月 |
四人暮らし(子供2) | 5,125万円/年 | 14万円/月 |
つまり、もし四人暮らしで4%ルールに則り半分の205万を運用益で補おうとする場合、月々14万円を投資して4%で運用して20年かかる、ということになります。
なげぇわ。
新卒から月々14万投資して、42歳で目標額達成・・・。新卒で14万も投資に回せる人いるか・・?
運用利回り4%
問題のここですよね。これ、出来ますか?
先の研究もS&P500指数を前提としており、同指数の平均リターンは7.5%と言われています。ただ2000年からの10年間の平均リターンはマイナス6.5%でしたし、"あなたの老後"が好景気に恵まれるかどうかは分かりません。
経済が成長し続ける限り株価も上がっていくと考えられますが、4%運用し続けることが果たしてできるのか、よく考えてみてください。
インデックス投資だけしていたら大丈夫とお考えの貴方。ではリタイア後暴落してもこつこつと続けられますか?その時あなたに入金する力はありません。ただただ減っていく資産を見ることに耐えられますか?
過去の歴史がそうだから、今後もそうなるかどうかなんて誰も分かりません。
労働で200万
最後の検証事項です。
4人暮らしのサイドFireマンは半分を投資で、半分を労働で補うという考えでしたね。その半分は約200万ですが、これを程よい労働で補おうとするわけです。早期リタイアしたのに週5で働いていたら意味ないですからね。
ではそれを例えば週3で達成しようとしましょう。200万ということは、月16万円。月16万週3で安定して稼げる仕事・・・?
そんなのなくなくない?
副業だのなんだの、と言われてますが、16万円を週3、稼働日12日で稼ぐって、よほどその人の時間単価が高かったり、1タスクあたりの単価が高い作業です。もちろんそういう仕事をするために今から資格だの副業だのを作っていくのだとは理解していますが、そもそも週5で働きたくないからサイドFireしたい・今の仕事がいやだから不労所得でなんとかしたいというマインドの人が、週3で安定して15万稼ぐことが出来るのでしょうか。
それなら週5働いても苦痛にならない好きな仕事探して転職すれば?って思っちゃうんです。
二人暮らしサイドFireマンであれば135万、つまり月10万ちょっと。それでもなかなか大変ですよね。
仮に42歳でサイドFireして、そこから30年以上安定して、週3で月10万稼ぐ。。。そんな仕事があれば教えてください。

本当にできるの?
私は今運用益が5,000万近くあるので、サイドFireをやろうと思えばできます。
が、しません。
なぜなら今の仕事が好きだし、やめる理由がないし、週2-3で働ける他の仕事が思い浮かばないからです。
それよりも、今後も4%で運用し続ける(暴落時の精神的な)自信がないからです。
むしろサイドFireは今の仕事で文字通りFire(クビ)された時に選ぶことのできるボーナスステージだと思っています。
今の仕事が嫌だから、ゆっくり暮らしたいから・・・そういう人は、4%で運用していける自信があるのか、もう一度考えてみてください。
それに、残り分を別の労働で補えるのかどうか、本当にそんな仕事があるのか、よく考えてみてください。
結局、週5で働いて月20万、みたいな生活になるのであれば本末転倒ですからね。